3rdアルバムのデザインを担当した飯島商店のコムラマイさん、タカラマハヤさんと、ルルルルズメンバー奥野大樹、石垣陽菜が、CDのデザインに関する秘密を語る…?
これを読んだら、発売までもう待てない!
– まずはじめに、今回一緒に作品作りを行うことになったきっかけについて聞かせてください。
石垣:私がよく一緒に演奏しているドラマーが東京塩麹というバンドをやっていて、そのパーカッションをマハヤくんが担当されているので前から知っていました。コムラさんは、作品を拝見させていただいたときに一目惚れしてしまって(笑) 1年ほど前から見ていたんですけど。友達の友達みたいな感じなので、Twitterをフォローせず見ていて、一方的にファンだったんですけど(笑)
コムラ:(笑)
石垣: 「僕らの生まれた町」というタイトルになってから、デザイナーさんの候補をバンド内で相談して。今回のコンセプトとして、同世代の方と一緒に作品を作れたらなっていう思いがあったんです。
奥野:そうだね。石垣はバンドの中で、音楽以外のものについても、結構敏感なタイプなので。「この方どうですか?」っていってコムラさんの写真を見て。あのとき何の写真を見たんだっけな。
石垣:なんでしたっけね。風景だったり、人物だったり、何枚か自分の趣味みたいな(笑) それをみんなに共有させてもらったんですよ。
奥野:それで「これじゃん!」って、一発で決まりましたね。でも引き受けてもらえるのかなっていうところもあるから、とりあえずお話だけしてみよう、っていうのが経緯ですよね。
– ルルルルズについて、お二人はなにか情報などはありましたか?
コムラ:石垣さんから撮影のご相談をいただいたときに「ルルルルズやん」「知ってる」って(笑) 多分大学生のときに何かで聴いたことがあって。バンド名にインパクトがあって覚えやすかったので、それで知ってました。すごく嬉しかったです。
石垣:ありがとうございます。よかったです、ほんとに(笑)
コムラ:石垣さんから連絡をいただく前に、今回パーカッションを担当したタカシさんのTwitterで「収録に参加しました」っていうツイートを拝見してて、いいなって思ってたんですけど、まさか少し経った後に自分の方に連絡がきて、びっくりしました。
マハヤ:僕はルルルルズは大学のときに知ったのかな。ウラカワくんのグッズがあったりとか、周辺で関わってる人がいたりして。長らく盤が出てないのも知っていました。タカシがレコーディングに参加したって言ってたんで、「作るんだな」っていうのは思ってました。すごく楽しみにしてました、個人的には。
– 最初に会った時の印象はどういった感じでしたか?
マハヤ:なんかね、みなさん素敵な方でね、話しやすい(笑) こんな話しやすい人おるんや、みたいな(笑)
コムラ:そうそう(笑) 打ち合わせで奥野さんと石垣さんとお会いした時もすごく丁寧だし、すごく親切で。なんか恐縮です。
奥野:最初の打ち合わせは、東京でのワンマンライブをやるモナレコードの2階でしたよね。ガッキーと二人で、コムラさんをお呼びして。ちょうどあの時はライブのお写真のお仕事をされた後でしたよね。
コムラ:あ、そうなんです。ちょうど下北で撮影があって。
奥野:二人で待っててね、忙しい方だからな、って。
石垣:きてくれるかなーって。
コムラ:(笑) 行きます、それは(笑)
石垣:その日に初めてお会いしたんですけど、クールな作品からも優しそうなイメージはあって。こんなに話しやすい方だというか、気さくな感じで。意外でした。作品はカッコいいんですけど。本人はすごく可愛らしい方で、いい意味でびっくりした覚えがあります。
コムラ:(笑) 私あんまり顔出さないんで。でもそれだけちゃんと作品を見てくださってよかったです。他の4名の方にお家に来てもらって撮影の前にお話した時も、すごくみなさん話しやすいし、会話のテンポ感とかちょうどいいなって思って、安心感が。
マハヤ:みんな気配りあるな、って。
コムラ:そう、本当に。
– 今回はコムラさんにアーティスト写真とジャケットお願いしましたが、どのような内容になっているのかお聞かせください。
コムラ:アー写は下北沢で打ち合わせをしたときのイメージがベースになっています。メンバーそれぞれが普段は違うバンドであったり、違うお仕事とかをされていて。毎日一緒に、ずっとルルルルズの何かをやっているわけじゃなくて。そういう他の時間もあるっていうのがすごく魅力的なバンドだなって思っています。
それぞれが自立した個性のある素敵な人たちの集団ということが伝わるような写真にしようと思っていました。1枚の写真に6人全員がいるのではなくて、別々のカットを1枚にするっていうのは、打ち合わせの段階で固まっていました。
背景には煙を使用しているんですけど、ちょっとミステリアスなというか、アーティストさんがぐんぐん前に出てくるよりも、少しフィルターがあった方がいいのかなって。人間がドンってくるよりは、ちょっとマイルドな印象にするために煙を使って、ちょっと白っぽい曇った、くすんだ感じを意識しました。
あとは目線がそれぞれ少しずつ違うんですけど。それもそれぞれやっていることがあるっていうメッセージで。一つの方向を全員向いているのはあまりにも統一感がありすぎる感じがしたので、わざとバラしていく作業を意識しました。
– ジャケットについてはいかがですか?
コムラ:ジャケットの窓の写真は横須賀の駅前のビルの窓です。3階か4階か5階のちょっと高いところの窓を1階から撮りました。候補でお出しした他のカットもほとんどが横須賀で撮った街並みであったり、風景とかを撮影したんですけど、私は窓が一番いいなと思っていたので、選んでくださって嬉しかったです。
石垣:本当は全部良くて。
コムラ:(笑)
石垣:みんながそれぞれ3枚くらい選んだ中には、必ず今回のジャケットの窓の写真はあったんですけど。今回他のやつも全部いいなと思っていて。今回のコンセプトじゃないですけど、「私たちが生まれた町にあるんじゃない?この窓」みたいな。なんか家の近くにありそうっていうか。多分誰もがそうなんですけど。特別な窓じゃない感じがいいなと思っていて。
コムラ:そうなんですよ。
石垣:家の近くにありそうな感じがよかったんですよね。すごく気に入ってますね。
マハヤ:窓ってどこにでもあるっていうか。別にどこじゃなきゃないってわけじゃないですよね。でもすごく生活が写ってるっていうか。まあでも映りすぎない程度で、っていう塩梅がいいのかなって。
コムラ:他にも窓の写真お送りしたんですけど、採用された窓だけ複雑な形で、普通の二分割の窓ではなくて、結構サッシとか複雑なんですよ、ピースが組み合わさっているような。それも6人と他のエンジニアさんとか、サポートミュージシャンの方とか、いろんな思いというか、人間がいっぱい関わっているっていうのも複雑な窓の感じで伝わればいいなって。なので採用してくださって嬉しかったです。
奥野:僕がいいと思うのは、まさに今おっしゃってたようなところで。石垣が言っていたように窓ってどこにでもあるじゃないですか。うちの近くにもありそうなんだけど、あの窓って。よくよく見るといろんな層になっているし、物が写り込んでいたりとか。
コムラ:そうです。
奥野:あれって、そこで誰かが窓開けたりしてたりとか、多少曇っているところもあったりだとか。その時間的なストーリーがないとああいった窓は出来上がらないなと思ってて。なんかこれうちの近くにあるっぽくて、しかもレトロな感じでいいな、っていうところに加えて、この窓を見たときに、音楽で表現したものが受け継がれているって思って、そこが素晴らしいなと思いました。
コムラさんの写真を拝見したときも、その写真の中に閉じ込められている表現したい何かとか、方法論とか思考が一枚の中に凝縮されているのがアートだなって。多分そういうところを感じて、即採用って。採用って言い方はおこがましいですけど(笑)
コムラ:嬉しい(笑)
奥野:すごく気に入ってます。前作からやっぱりそういうところはすごく考えているんです。素晴らしいと思いました。
コムラ:ありがとうございます。
– デザインに関してはどうですか?
マハヤ:そうですね、まず始める前に思ったのは「なんで窓を選んだのかな」っていうところがスタートになっていて。前までのルルルルズの作品を拝見すると、1作目はファブリックなイメージで、2作目はボタニカルなイメージがあって。3作目でライフなのかなって、それとインダストリアルなのかな。なんかそういう色んな要素がルルルルズの中でも変遷してきて。「こういうイメージの感じになったのかな」って、それを感じるところから始まりました。
ジャケットの裏側の写真なんですけど、あれは2人で裏側の写真が欲しいなってなった話したときに「じゃあ裏側も窓にするか」っていうのは最初はラフに考えていたんですけど。前も後ろも窓だったら結局閉まってんじゃんみたいな感じになっちゃうんで。
石垣:あー、確かに。
マハヤ:裏側はひらけたほうが絶対いいだろうって。あの窓から見た景色っていうふうな考え方でもいいし。いま一瞬で思っただけなんですけど(笑)
石垣:(笑)
マハヤ:そのときは考えてなかったんですけど(笑) その窓が景色の中にあってもいいし。それと「僕らの生まれた町」感。奥野さんには反応してもらいましたけど、東横線なんじゃないかって。結構勝手なイメージで感じてたから。あれは二人で一緒に写真のストックを見ながら考えてたんですけど、即決だったかな。これがいいって。
コムラ:実はこの写真は真ん中に人が写っていた背景なんです。そういう写真も結構好きで。というのは、真ん中の人を意識して撮っているので、背景はそこまで細かく全部見ているわけではないんですよ。今回の東横線の写真も、たまたまなんかいい感じに写って、カメラマンの欲がない写真で。ここの線路をよく撮ろうとか、電車が来たからこういう風に撮ろうとか、そういうやらしさが全くなくて、その素直さっていうのがルルルルズの歌とか曲とかにすごくマッチしてていいのかなって思います。もの自体も、撮り方も。
マハヤ:そうですね。
コムラ:窓はかなり意識して撮ってるんですよ(笑) 見つけたー!っていって撮ってるんですけど(笑) たまたま写った感じっていうのが裏面にあると、どっちもよく見えていいのかなって思います。
マハヤ:お互いが引っ張りあって、正反対でいいのかなっていうふうに思ってアレンジしました。まだデザインの話に入ってないんですけど(笑)
コムラ:(笑)
マハヤ:デザインに関しては、1作目2作目がファブリックからボタニカルで来ているので、じゃ次はなんなのかってのは、さっきはライフの方かなって話しましたけど、結構インダストリアルなイメージも入ってきているのかなって思って。やっぱり音を聴いたときに、音の話になっちゃいますね、これ。
奥野:デザイナーの観点から音についての話は聞きたいですね。
石垣:そうですね。アーティストであり、ミュージシャンだから。
マハヤ:音質だとか音の感じとか、歌詞も聴くんですけど。結構そういうのに引っ張られながらデザインしていて。自分なりに音のイメージをどう昇華していくか、あるいはそれを無視するっていう方法もあるんですけど。多分音楽もやってるから自然にそういうふうに考えちゃうっていうのが、自分でも面白いなって思ってて。今回のは音的には自然な感じというか、オーガニックな感じみたいなのではなくて。清潔感とか、整理されたような良さがあって。デザインの方向性をドイツの家電みたいにしてみようって勝手に思って。この窓の人の家には絶対ドイツの家電があって欲しい(笑)
全員:(笑)
マハヤ:そういうイメージで。だからベージュっぽいトーン、グレーっぽいトーン。ディーターラムスっていうドイツの家電のデザイナーがいるんですけど、ブラウンやった人ですね。そのイメージをすごく取り入れていて。基本的には全部色はグレートーンと、それより濃い無彩色のグレーと、薄いグレーもあって、有彩色を一応挟んでスリートーンで。その世界観で組んでいこうかなって思って。
奥野:今回の音源を聴いたときに、ミュージシャンじゃないと整理された印象っていうのは感じられないじゃないですか。感覚的に受け取ることはできるけれど、そこには理由があってこうなっている、っていうことを汲み取っていただいて嬉しです。ルルルルズってカフェで演奏してそうとか、ふわっとした雰囲気で捉えられがちなんだけど、やっぱり本質を捉えてくださっているのは素晴らしいなと、嬉しいですよね。
石垣:嬉しいですね。
奥野:作ったものに対して矛盾もなく、且つこの人たちしかできないみたいなものが仕上がって、すごく奇跡的なことが起こったと思って。一発でパキっとはまった感じがあって。やっぱりさすがでしたよね。
マハヤ:すごく嬉しいです。
石垣:そうですね、本当にその通りで。私がマハヤさんにお願いしたかったのは、音楽活動をしながらデザインもやっているっていう、そんなハイブリットな目線があるからで。やっぱり音楽やっている人の目線で作ってくれるっていうのが、ずっとお願いしたかった理由なんですね。ずっとファンだったっていうのもあるんですけど(笑) マハヤさんも三年前くらいから作品を拝見させてもらってて。いや本当に今回念願のというか。よかったです、本当に。
奥野:最初にここに来るときにデザイナー決めてなかったんですよ。
石垣:そうなんですよ、実は。
奥野:今だから言うけどね、ちょっと確信犯的な部分はありましたよね。
石垣:そうなんですよ、ちょっと下心的な。
奥野:マハヤさんって素晴らしいデザイナーがいるんでって話は石垣から聞いてたんで。僕もなんか探そうかなって思ってたんですけど、もしかしたらいけるかなっていう気持ちが。
マハヤ:ちょっと確信犯的な(笑)
石垣: アーティスト写真撮影しに来て、コムラさんから「多分今日いると思います」って聞いたときに(笑)
奥野:ちょっといつ切り出そうかドキドキな感じで。
石垣:そうなんですよねー(笑)